鍼灸師は「技術」と「人柄」どちらが大切か

鍼灸師にとって大切なのは「技術」か「人柄」か。議論になることがある。

 

鍼灸師が技術を問われると同時に、人に接する仕事でもあるからだ。医師なども同じように「技術か人柄か」と問われることがあると思う。

 

今回はこの問題を考えるために、技術の良し悪し、人柄の良し悪し、それぞれの組み合わせについて考えてみたいと思う。

 

つまり、この世には4種類の鍼灸師がいる。

 

①技術が良くて、人柄も良い

②技術は良いが、人柄が悪い

③技術が悪いが、人柄は良い

④技術が悪くて、人柄も悪い

 

早速、行ってみよう。

 

①技術が良くて、人柄も良い鍼灸師

これは最高である。技術が良い上に、人柄まで良い。言うことなしである。全ての鍼灸師が目指すべき模範であり、最高の到達地点と言っていい。と言うか、冒頭で「どちらが大切か」と言っているのにどっちも良いんだから、何も言うことはない。

 

②技術は良いが、人柄が悪い鍼灸師

職人タイプの鍼灸師にしばしば見られる。ぶっきらぼうで人当りが悪かったり、単純に人間性に問題があったりするが、腕は良い。第一印象は良くないが、技術があるのでそこそこやっていける。そもそも鍼灸院に行く人は、何かしら困っている状況にある。なので「治してくれるなら、まぁ良いか」と思ってくれるケースも多い。

 

まれにタチの悪い鍼灸師だと、職人ぶって「俺は愛想がないから」などと聞いてもいないのに語りだし技術は良いが、人柄が悪い鍼灸師を演じていることがある。何でこんなことをするのか分からないけど、おそらく「この鍼灸師さん、不愛想だけど患者さんが来てるってことは、腕はいいんじゃないか」と思わせるギャップを狙っているんだと思う。

 

「お前は単に性格が悪いだけ」と言いたくなるが、絡まれるとややこしいのでそっと身を引くのが一番だ。

 

③技術が悪いが、人柄は良い鍼灸師

これはちょっと難しい。というもの、鍼灸師の腕は技術だけではなく、総合的な能力で決まるからだ。仮に技術がなくても、ものすごく話が上手かったり、また話を聞くのが上手かったりすると、鍼灸院は結構繁盛する。繁盛していると「繁盛してる=腕が良い」という錯覚も手伝って、ますます繁盛する。

 

また患者さんから見て「この鍼灸師は腕が良いか」というのは、施術を受けてみるまでわからない。何なら、施術を受けてもわからない。効いてるんだか効いてないんだか、よくわからない施術を受けたとしても自信満々で「こういうものです」と言われてしまえば、患者さんは「そういうものなのか」と信じるしかない。そもそも、鍼灸で何ができるのか、どんな効果があるのか、ほとんど世に知られていないのだから。

 

で、繁盛している鍼灸院にはリピーターがたくさんいる。私の経験上、この手のリピーターをつかむことに長けた鍼灸師期待と不安を煽るのがとても上手い。つまり「ここでなら治るかもしれない」という期待を抱かせ「通わないと治らないんじゃないか」という不安を掻き立てる。このアメとムチを巧みに使われると、患者さんは鍼灸師に「ハマって」しまう。

 

これは考えようによってはタチが悪い。なぜなら、患者さんが良くなる機会を奪っているからだ。

 

もし鍼灸施術を受けて「効果がないな」と思えば、他の鍼灸院に行ったり、他の治療法を試せばいい。しかし人間的な魅力があり、効果があるかイマイチわからないが何度も通ってしまう鍼灸師は、患者さんが良くなる「機会」を奪っているとも言える。

 

例え技術がなくても、その鍼灸師によって救われる人がいるなら構わない。しかし、効果がないのに「この鍼灸師を信じてみよう」と思う患者さんの気持ちや「ここでなければ治らないかもしれない」と思う不安な気持ちを食い物にするような鍼灸師がいたら…それは許しがたい。

 

④技術が悪くて、人柄も悪い

これはシンプルに最悪である。技術か人柄を磨けば「技術は良いが、人柄が悪い」もしくは「技術が悪いが、人柄は良い」鍼灸師にクラスチェンジできる可能性はある。しかし何年も鍼灸師をやっているのにこのレベルに留まってるようなら、世のため人のためにも辞めて欲しい。

 

結局、技術と人柄どちらが大切か

個人的には、技術の方が大事だと思う。もちろん、人柄が良い鍼灸師にも需要がある。

しかし、そういう人は鍼灸師でなくてもやっていける。鍼灸というツールを利用しているが、鍼灸師である必要はない。

 

鍼灸師であるなら鍼と灸でなければできないことに優れていて欲しいと、私は思う。