「あ、鍼って本当に効くんだ」と思ったことのない鍼灸師は大したことない

鍼灸の専門学校に通っていた頃に「もし自分が超絶テクニックを身につけたら」と妄想していた。

 

肩が痛くて上がらない患者が僕のところにやってくる。僕は患者の身体に鍼を1本打つ。すると、先ほどまで痛くて上がらなかった肩が…上がっている!「先生、痛くないです!」「でしょう(ドヤァ)」

 

みたいな感じだ。 ヒマだったんですかね

 

現在、超絶テクニックを身につけたとは言い難いが、それでも会心の一撃とも言えるホームラン級の成果が出る時がある。実際そんな場面に遭遇すると「ドヤァ」ではなく「あ、鍼って本当に効くんだ」と素直に思う。患者もビックリしてるが、それ以上に僕がビックリしている。もちろん悟られないようにはするんだけど。

 

マジか、と。

鍼ってこんなに効くのか、と。

 

当時「超絶テクニックを身につけたい」とは思いつつも「しかし、鍼なんて本当に効くんかいな?」みたいな思いは常に頭の片隅にあった。

 

しかし、僕はすでに知ってしまった。然るべき状況で、然るべきツボに正確に鍼をすると、瞬間的に症状は改善する。これは大げさな表現ではない。マジで変わっちゃうのだ。これは結構しつこい症状じゃないのコレ、みたいなのがアッサリ治ってしまう。そんな状況に遭遇すると、自分の腕をドヤる気持ちは微塵も現れない。ただただ、バカみたいに「は~鍼って効くんだな~」と思うばかり。口は半開きである。

 

僕もこういった鍼の力を知らなかった時は「鍼はすごい!」「鍼は色んな症状に効果がある!」みたいな根拠もない曖昧なことを言っていた。今思えば詐欺だなコレ。そんなこと言ってるから、いつまで経っても「鍼はあやしい」ってイメージが無くならないんだってば。

 

また「鍼灸師は鍼の効果を知ってなくちゃいけない」という暗黙のプレッシャーがある。これは、自分でもおかしなことを言っていると思う。鍼灸のプロたる鍼灸師が、鍼の効果を知っているのは当たり前である。しかし、現実は鍼灸師ですら鍼がどんな効果を引き起こすのか、正確には把握していない。

 

せいぜい「打ったところの筋肉が緩む」とか「血流が良くなる」みたいな漠然としたイメージが関の山である。漠然としたイメージしか持ってないのに、シャープな効果を生み出せるわけがない。切れ味するどい、「鍼って本当に効くんだな」と思える効果は生まれない。

 

料理人が味見もせずに「これ、美味しいですから召し上がってください」と言っていたら「詐欺じゃん」と思うのが普通だろう。自分の料理の味を知らないプロの料理人、そんなもんプロでも何でもない。しかし、鍼灸業界ではそれがまかり通っている。

 

どうかしてると思うんだけど、どうですかね?